抄録
心房細動例でまれならずみられるジグザグ型心房興奮の波形の特徴とその先行周期との関係につき実験的検討を行った.麻酔開胸犬10頭において, 右心房自由壁外膜面の円形領域 (径16mm) 内の47点から双極エレクトログラムを同時記録した, 中心に, 200msec→有効不応期+1msecの刺激 (S1-S2) 間隔で単発早期刺激を加え, 早期心房興奮の幅・形状の変化について検討した.全10頭を通じ, 早期興奮では17.9%の誘導点で双極エレクトログラムの持続が延長し, 同時に棘波数は増加, 棘波振幅は減少することが多かった.また, 屡々棘波方向反転や棘波融合, ときに棘波消失を認めた.これらの変化はS1-S2間隔を有効不応期後30~38msec以下に短縮すると生じ始め, そのさらなる短縮につれて急速に程度を増した.以上からジグザグ型心房興奮の発生要因の一つとして電極直下付近の小領域内における不応期の不均一性が関与すると考えられた.