抄録
慢性心不全に対するβ遮断薬療法の作用発現の機序, および効果の予測因子については未だ一定の見解が得られていない.そこでβ遮断薬の徐拍作用, および治療前の冠予備能と左室駆出率の変化との関係につき検討した.拡張型心筋症22例 (β遮断薬服用群12例, 非服用群10例, 観察期間34±27カ月) に対し, 治療開始前と後にホルター心電図と心エコーを施行した, また治療前の診断的心臓力テーテル検査時に冠予備能を計測した.治療前後の平均心拍数 (全例前, 77±11対後, 69±7/分) , 左室駆出率 (33±10対47±14%) の変化は, 両群間に差を認めなかった.平均心拍数と駆出率 (r=-0.66, P<0.05) , および冠予備能と駆出率の変化の間 (r=0.74, P<0.05) に服用群においてのみ有意な相関を認めた.これらの結果は徐拍作用がβ遮断薬の左室機能改善機序の一つであること, 冠予備能がこれらの効果の発現機序に関与することが示唆された.