抄録
ATP感受性心房内リエントリー性頻拍は少量のATPで停止する比較的まれな頻拍であり, 房室結節近傍の前および後中隔にリエントリー回路が存在する例の報告が多い, 今回我々は心房中隔以外にリエントリー回路が存在したATP感受性心房内リエントリー性頻拍2例を経験し, その特徴について検討したので報告する.両症例とも, 頻拍時に体表面心電図の下方四肢誘導および前胸部誘導において陰性P波を認めた.頻拍は心房期外刺激により誘発および停止が再現性をもって可能であり, 頻拍誘発時の期外刺激間隔と頻拍開始時の復元周期は逆相関を示し, 心房内リエントリー性頻拍と診断した.また少量のATP (1~3mg) およびベラパミル (2, 5~5mg) が頻拍の停止に有効であった.頻拍中の最早期興奮部位は後側壁三尖弁輪部に存在し, 同部位に対する高周波アブレーションにより根治した.