抄録
冠攣縮性狭心症 (VAP) において血管痙攣のない時期に, 体表面でのActivation Recovery Interval (ARI) Mapの空間分布を評価することによってVAPの診断および攣縮冠動脈枝の検出が可能か否か検討した, 非発作時に正常な標準12誘導心電図を示すVAP22例を対象にした, 対照は心疾患のない41例とした.体表面ARl mapは, 多目的心電計 (VCM3000, フクダ電子社製) にて87誘導点方法で冠攣縮のない時期に記録した.ARIは, QRS波の最小一次微分値の時点からT波の最大一次微分値の時点までの時間として各誘導点ごとに測定し, 等しいARIを結んでARI mapを作成した.ARI値は心拍数により変動するので, Bazettの式で補正してARIcを用いた.ARIc map記録は発作直後, 2週間, 1カ月, 6カ月後に記録した.攣縮冠動脈が右冠動脈であれば右前胸部下方に, 左冠動脈であれば前胸部中央やや左寄りにARIcの短縮領域が出現し, 虚血領域に対応する結果が得られた.VAPでは, 正常群に比し最小ARIc値が短縮していた.最小ARIc値の平均値はそれぞれVAP=160±28.8msec, 正常群: 196±14.8msecであった (p<0.0001) .また最終発作から2週間程度ではARIcは有意に短縮したが, それ以後では認められなかった, 発作から2週間前後であれば, 非発作時においてもVAPの診断ができ, さらにARIcの短縮領域から攣縮冠動脈枝の推定が可能であった.