2004 年 24 巻 1 号 p. 3-8
四半世紀にわたる議論の末, 慢性心不全に対するβ遮断薬の有効性がようやく確立された.いくつか提唱されている作用機序に関する仮説のなかで, アドレナリン受容体リン酸化酵素の発現が重要な役割を果たす.重症心不全にβ遮断薬を導入するときには, “inverse agonism”という薬理学的特性に配慮する必要がある.アドレナリン受容体シグナル伝達とレニン・アンジオテンシン系に細胞内クロストークが存在することが最近示された, アンジオテンシン変換酵素阻害薬あるいはアンジオテンシン受容体遮断薬は有効な併用薬剤となる, β遮断薬の効果には個人差があるといわれる.アドレナリン受容体シグナル伝達は同受容体の遺伝子多型によって規定されるので, この遺伝子多型がβ遮断薬の効果を左右している可能性がある.