心電図
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2. β遮断薬の基礎電気生理
神谷 香一郎
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2004 年 24 巻 1 号 p. 9-14

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抄録

β遮断薬が心不全患者の予後を改善することは, 大規模臨床試験で明らかにされている.β遮断薬の作用は多岐にわたっており, 心肥大, 線維化, アポトーシス, 酸化ストレス, レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系などを介して心臓リモデリングを抑制するほかに, 抗不整脈作用も関与すると考えられるがその詳細は明らかでない, β遮断薬の抗不整脈作用は, 当然のことながらその発生機序にβ受容体刺激が関与する不整脈に対して発揮される, β1受容体刺激は, アデニルシクラーゼ・サイクリックAMP系そしてプロテインキナーゼAを活性化する.その結果, Ca2+チヤネルのみならず, IKsチヤネルそしてIfチャネルなど多くのイオンチャネルをリン酸化してこれらのチャネルを介する電流を増加させる.Ca2+電流の増大は房室結節やプルキンエ線維の自動能を亢進し, 心房や心室で遅延および早期後脱分極をもたらす.自動能の亢進にはIf電流の増大も関与するとされている.β遮断薬はこれらの自動能亢進の責任イオン電流を正常化することにより抗不整脈作用を示す.リエントリー性不整脈に対しても, 房室結節と副伝導路を含む大きなリエントリー回路などの場合には抗不整脈作用を示す.またQT延長も認められることからIII群抗不整脈薬作用も期待される.特にカルベジロールは, β遮断薬としての上記クラス作用のほかに直接的にイオンチヤネルを抑制する可能性がある.本稿では, 心不全や不整脈に対するβ遮断薬の薬効について, β遮断薬に共通するクラス作用, そしてカルベジロール固有のイオンチャネルへの急性・慢性作用, に分けて述べる.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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