心電図
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3.難治性心室性不整脈に対するニフェカラントの有用性
松田 直樹河原井 浩孝志賀 剛庄田 守男萩原 誠久笠貫 宏
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2005 年 25 巻 1 号 p. 42-48

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抄録
欧米では, 再発を繰り返す持続性心室頻拍 (VT) や直流電流 (DC) 抵抗性の心室細動 (VF) に対し, 静注アミオダロンが第一選択として用いられるようになったが, 我が国ではいまだ認可されていない, 一方, 我が国で開発された静注用III群抗不整脈薬としてニフエカラントがある.本薬は, IKr電流をほぼ選択的に抑制し, 常用量で心室不応期を約15%延長させる, I群抗不整脈薬でみられる心機能抑制はない.
基礎心疾患を有しI群抗不整脈薬が無効の再発性持続性VT64例に対しニフエカラントを使用した.VT中にボーラス静注を行った32例中18例 (56%) でVTが停止した.持続静注を行った62例中53例 (85%) でVTの再発を抑制できた.この結果のように, その薬理作用の特性 (逆頻度依存性活動電位幅延長作用) から, ニフェカラントは頻脈の停止よりも予防に有用であり, 自験例でもインセサント型VTやVTのelectrical stormに対し高い効果を示した.
ニフエカラント持続静注中のVT再発時, 投与量に変化はなくても, QTc時間は有意に短縮していた.一方, 全86例中3例 (3.5%) において計4回のTorsades de pointes (Tdp) が発生したが, Tdp発生時はすべてQTc時間が0.55secを超えていた.すなわち, ニフエカラントを効果的かつ安全に使用するにはQTc時間のモニタリングが重要と考えられ, QTc時間の変化に合わせた投与量の微調整, 電解質の補正, 虚血対策, 場合によってはβ遮断薬やペーシングの併用が必要となる.
また, DC無効のVF6例に対しニフエカラント静注後DCを再施行し, 4例で除細動に成功した, 院外心停止例に対するニフエカラントの有効性が期待できるが, それを確認する我が国におけるエビデンスが待たれる.
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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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