抄録
ニコチンは喫煙によって肺から吸収された後, 肝臓においてコチニンへと代謝され薬理作用を失う.この代謝反応を触媒しているのはCYP2A6である.ニコチンの代謝能には非常に大きな個人差が認められており, CYP2A6の遺伝子多型との関連が明らかになった.日本人では遺伝子全欠損型であるCYP2A64や, アミノ酸変異を伴うsingle nucleotide polymorphism (SNP) を有するCYP2A67やCYP2A610, またプロモータ領域にSNPを有するCYP2A69の変異型の遺伝子頻度が高く (2~20%) , これらの遺伝子型を組み合わせて2つもつ時, ニコチン代謝のpoor metabolizer (PM) となる.このようにニコチン代謝能の個人差の大部分はCYP2A6の遺伝子多型で説明できる.PMではニコチンの消失半減期が顕著に延長し, 体内からの消失が遅延する.CYP2A6の遺伝子多型は喫煙量および喫煙に関連する疾患リスクにかかわる可能性が考えられる.