抄録
左室肥大の原因は, 心筋症などを除けば主に左室に対する圧負荷と容量負荷とに分けられ, 中でも圧負荷をもたらす高血圧が原因の最多を占める.左室肥大はこれらの原因疾患の結果生じるものであるが, 特に高血圧において左室肥大の存在自体が予後予測因子の一つであることが認識されて以来, その診断が重要視されている.左室肥大の診断は, 従来心電図とともに種々の画像診断法により行われてきたが, 現在は簡便に形態・機能評価および左室重量の推定が可能なことから心エコー図法による診断がgold standardとして定着した観がある.1906年にEinthovenが心電図診断名として初めて「左室肥大」を用いて以来, 心電図による左室肥大の診断基準が数多く提唱されてきた.心電図による左室肥大の診断は, 量的診断精度は心エコー図法などに比し劣るが, 質的診断という点では他の検査法にない特徴を有する.したがって, これらを組み合わせて病態学的により正しく左室肥大を診断し, 適切な治療に結びつけることが望まれる.