心電図
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心筋細胞シート移植片とホスト心筋との電気的同期現象
三好 俊一郎板橋 祐史古田 晃吉良 真一郎佐藤 俊明福本 耕太郎西山 信大肥田 直子佐竹 正樹清水 達也岡野 光夫小川 聡
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2008 年 28 巻 4 号 p. 309-315

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抄録

近年, 幹細胞からの心筋再生の研究が進み, 心筋再生療法が現実味を帯びてきた.しかしその実践には多くのハードルがある.その一つに, 移植した幹細胞の組織への生着効率の低さが指摘されている.幹細胞移植では幹細胞を培養で増殖させたうえで移植する.従来は移植直前に細胞を酵素反応によって単離した後移植していたが, 生着率の低い原因の一つとして酵素反応が細胞固有の接着因子や培養中に構築された3次元構造を破壊することが考えられていた.近年バイオテクノロジー技術を駆使して酵素反応を用いずに培養細胞を回収する方法が考案された.その代表的なものに低温度によって疎水性が親水性に変化するポリマーコーティングを培養皿表面に行うことで, 培養中に再構築された3次元構造や内因性接着因子を破壊せずに温度変化により回収する方法がある.この方法で回収された細胞は1枚のシート状の組織片となっているため細胞シート技術とよばれている.また移植後に過度な細胞集積がないため, 細胞死を生じにくく, 生着効率がきわめて高い特徴を有することが知られている.しかしこのような方法で移植した再生心筋組織が, ホスト心筋組織と同期しなければ, 心臓全体としての心機能改善には寄与しないため, 移植片とホストとの電気的同期現象の確立が重要な課題であった.そのためわれわれは心筋細胞と移植片が, 移植後にホストと同期して収縮するか否か, また移植後に不整脈などを生じさせるか否かを検討した.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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