2008 年 28 巻 4 号 p. 328-332
昨今の医療技術の進歩に伴い, 傷害を受けた組織や臓器の治療方法として幹細胞を用いた再生療法の応用が期待されている, 循環器領域の再生医療には血管再生治療と心筋再生治療が存在するが, 拡張型心筋症などの重症心不全には, 心筋と血管の両者を再生させることが理想である.近年, 心不全に対する再生医療として, 骨髄単核球 (mononuclear cells; MNC) , 骨格筋芽細胞, 間葉系幹細胞 (mesenchymal stemcells; MSC) などのさまざまな細胞系を用いた細胞移植治療が試みられるようになってきた.非自己の細胞を用いる場合には拒絶反応への対応が必要であり, 倫理的な問題がある.これらの問題を回避し得るものとして自己細胞を用いた再生医療, 特に骨髄由来の幹細胞や前駆細胞を用いた細胞移植治療が注目されている, 本稿では, 骨髄細胞, 特に自己の骨髄間葉系幹細胞を用いた心不全治療の可能性について述べる.