心電図
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徐脈依存性を呈した心室性不整脈を有する1症例
―特に姿勢傾斜依存性について―
渋谷 敏幸木村 道夫森川 政嗣村田 実相沢 義房和泉 徹小沢 武文柴田 昭
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1983 年 3 巻 6 号 p. 743-748

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抄録

徐脈依存性を呈した薬物抵抗性心室性不整脈の1例を報告した。患者は16歳の男性で12歳時より心室性不整脈を指摘され, 種々の抗不整脈薬の投与にもかかわらずこの不整脈は完全に抑制されなかった。今回頻発する心室性期外収縮と心室頻拍の治療のため入院した。
この不整脈は種々のvagal maneuverには影響されなかった。また背臥位および水平面より15度傾斜位の姿勢で出現し, 30度以上の傾斜位の姿勢をとると心拍数の増加に従い完全に消失するという心拍数および姿勢依存性がみられた。atropine 1 mgの静注により心拍数増加とともに不整脈は消失した。しかしこの抑制効果は心拍数がコントロール値にもどった時でも持続していた。またtreadmill運動負荷テスト中完全に抑制された。24時間Holter心電図の分析では心拍数が減少している睡眠中およびベッド上臥位に一致して不整脈の頻発がみられた。高位右房ペーシングではレート80, 90回/分時overdrive suppression効果により, この不整脈は抑制され, レート110回/分時房室結節はWenckebach周期に達したためoverdrive suppression効果得られず抑制されなかった。
以上のごとくこの症例の心室性不整脈は徐脈依存性を呈した。そしてその発生機序には迷走神経緊張の関与が示唆された。

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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