抄録
電気生理学的検査により, 洞房結節リエントリー性頻拍 (SANRT) と, 房室結節リエントリー性頻拍 (AVNRT) を誘発し得た1例を経験した。SANRT中の, P波の型状, 心房マッピングによる心房内興奮順序・心房内伝導時間は, 洞調律時のそれらと同様であった。心房早期刺激法により, 二重房室結節伝導路が認められ, AVNRTが誘発された。SANRT中に, AH時間の短い時 (約120msec) と長い時 (約275msec) が認められ, 前者ではfastpathwayを, 後者ではslow pathwayを房室伝導路として利用しているものと思われた。二重房室結節伝導路を有し, SANRT中に, AH時間の長短を認めた例は, 検索した限りでは, 本例が最初の症例と思われる。
SANRTの予防, AVNRTの停止および予防に, Ca拮抗剤であるジルチアゼムが有効であった。