抄録
金属学や材料学を魅力的な講義科目にするにはどうすればよいか,筆者の経験を述べる。大学教育が大衆化するなかで学生に興味を持たせつつ,質の高い学問的内容を系統的に教授することは重要である。それには,学生が日頃接している先端科学技術を教材にして,その背後にある基礎原理に親近感を持たせることが有効である。その後に,金属学や材料学の基礎概念を教える。
本論説ではその具体例を示した。地球の温度と量子論,繊維強化複合材料と応力集中,原子間力顕微鏡と曲げ変形のバネ定数,である。講義内容は見通しがよく,応用がきき,かつ長寿命であるべきことを主張した。