技術者倫理教育と工学教育の整合性を論じる前提として,欧米の工学倫理,理学,工学と技術,さらに専門家の定義を整理した.欧米の工学倫理は体系化されているが,過去および現在における人類が蒙った被害の大きさと人権問題,および倫理の地域性から,日本の工学教育への応用に疑問を呈した.また技術者倫理を論じる上で理学,工学,そして技術の内容の吟味,専門家の定義が極めて重要であることを合わせて論じた.それに基づき工学系高等教育における工学と技術の関係,技術者倫理教育と技術者の身分保障について論じ,第一に高等教育における教育の質を高め量を増やすことによって卒業生が専門家としての高度な知識を持つこと,第二に社会における技術者の身分保障が技術者倫理を実効あるものにするためには必須であることを示した.関連して大学および大学院での教育システム,およびJABEE,技術士の制度について論じた.