教育医学
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ウェーブレット補間法による韓国青少年の形態発育の年次推移に関する検証 -身長・体重のMPV年齢の年次推移からの解析-
藤井 勝紀Hosung NHOSeol-Hyang KIM花井 忠征
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2008 年 54 巻 2 号 p. 129-140

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抄録

形態(身長,体重,座高)発育の時代変化について,日本では毎年,文部科学省による調査結果が発表され,6歳(小学1年)から17歳(高校3年)までの身長,体重,座高における横断的発育データが解析されている.韓国においても体育科学研究院で実施された国民体力実態調査が1989年から現在まで3年ごとのデータが公表されている.しかしながら,韓国において体格・体力の年次推移が公表されているが,その年次推移に関して検討している報告が見られない.もちろん韓国では,体育科学研究院で実施された国民体力実態調査における身長,体重の1989年から2004年までの経年傾向をみるかぎり,その時代の日本とそれほど変わらず大きな変化は示されていないことが窺える.しかし,これら知見において一定の検討はなされているものの,決して十分な解析が行われるとはいえない.特に,韓国に至ってはほとんど報告がない.そこで,藤井(2006)が提唱したウェーブレット補間法を適用し,先ず身長の発育速度曲線の記述から思春期最大発育速度年齢(Maximum Peak Velocity : MPV)を特定し,身長のMPV年齢の時代的変化から韓国青少年の形態の早期化を検討し,さらに,韓国の社会経済状況の変化が身長と体重発育の年次推移にどのように影響を及ぼしたかを検証する.その結果,本研究における韓国人青少年の形態発育において,特に身長のMPV年齢の若年化から成熟度の早期化と発育パターンの変化が示されたことは,韓国における社会経済の高度成長化による形態発育への影響を客観的に示す証左と考えられる.しかし,韓国では高度経済成長はすでに終盤であり,現在の韓国に生起している発育促進期は終わっているが,男女形態における青年期の発育量増大の年次変化を考えれば,日本人のような発育の鈍化には至っていないと考えられる.

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2008 日本教育医学会
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