教育医学
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ホスファチジルセリン投与はショウジョウバエの加齢記憶障害を抑制する
清水 教永山口 慶一松浦 義昌坪内 伸司田中 良晴
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2008 年 54 巻 2 号 p. 141-148

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抄録

 リン脂質の1種であるフォスファチジルセリン(PS)は老齢の人間や動物において,記憶/学習能力を改善することが示唆されている.  しかしながら,大豆のトランス型フォスファチジルセリン(SB-tPS)が,特異的または非特異的な記憶/学習低下の抑制をもたらすか否かは不明である.我々はショウジョウバエの野性型および記憶/学習に関する変異型に対するSB-tPSの効果を調べた.  若いハエに5mg/kg/日のSB-tPSを与えても単純な嗅覚条件付けの直後(すなわち0時間目の記憶)では記憶に対して効果はなかった.しかし同じ量のPSは老いたハエに対しては加齢関連記憶障害を抑制した.中期記憶に障害のある変異体amnesiacは加齢関連記憶障害と同様の特徴を示すが,SB-tPSを高濃度(50または500mg/kg/日)で与えると記憶障害が抑制された.しかし学習障害の変異体turnipは,カルシウム/PS刺激によるプロテインカイネースCの活性化に障害があるもので,SB-tPSの効果はなかった.  従って,我々はSB-tPSが,カルシウム/PS刺激によるプロテインカイネースCの活性化を通して加齢関連記憶障害を抑制する,言い換えれば,Amnesiac依存性記憶障害を抑制するという説を提案する.しかしショウジョウバエの寿命に対してはSB-tPSの影響はなかった.

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2008 日本教育医学会
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