2008 年 23 巻 5 号 p. 361-365
我々は,広域スペクトラムを持つ抗菌薬としてカルバペネム,第4世代セフェム系及びニューキノロン系注射薬並びに抗methicillin resistant Staphylococcus aureus(MRSA)薬及び緑膿菌に対して効果を持つセフェムであるceftazidime(CAZ)を対象として届出制を実施した.本研究では,実施前後における抗菌薬の使用動向並びに耐性菌の分離率を半年毎に比較することで,届出制の有用性を評価した.その結果,広域スペクトラムを有する抗菌薬のantimicrobial using density(AUD)は,最高で34.1であったが,制度の実施後は16.0まで有意に低下した(p<0.01).一方,抗MRSA薬及びCAZのAUDは実施前後で低下しなかったが,これらの抗菌薬では届出制の実施以前より適正使用に対する意識が徹底されていたことが一因と考えられた.また,緑膿菌のカルバペネム系及びニューキノロン系抗菌薬に対する耐性菌の分離率は改善傾向がみられた.さらに,MRSAの分離率は届出制の実施後に有意に低下した(p<0.05).この理由として,広域スペクトラムを持つ抗菌薬のAUDが全般的に低下したことが一因と考えられた.以上より,適正使用が徹底されていない状況下では,届出制の実施は抗菌薬の使用を減少させ,耐性菌の検出状況を改善させる可能性が示唆された.