日本環境感染学会誌
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携帯型手指消毒薬の導入と手指衛生教育による手指衛生遵守率への効果
脇坂 浩
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2009 年 24 巻 1 号 p. 47-52

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抄録

  緊急的なケア前後に手指衛生を必須とするICU看護師に,携帯型手指消毒薬を提供し手指衛生の教育を促すことで,手指衛生の遵守率の向上に有用であるか検討した.構成的観察法により,携帯型消毒薬導入前後の手指衛生方法と手指衛生回数を調査した.三次救命救急センターICUの看護師16名を観察した結果,手指衛生必要数は1時間に約26回であった.手指衛生の教育後に携帯型手指消毒薬を導入したことで,手指消毒の実施率が上昇し,手指衛生の遵守率が約27%も向上した.しかし,携帯型消毒薬導入後に石鹸と流水による手洗いを実施しない対象が25.0%上昇,携帯型消毒薬導入後に手指衛生の遵守率が低下した対象(12.5%)は石鹸と流水による手洗い実施率が低下していた.また経験年数の少ない対象において手指衛生の遵守率が低い傾向を認めた.ケア別の手指衛生の遵守率では,携帯型消毒薬導入後に全て向上していたが,患者周囲のME機器や備品に接触後の手指衛生は低値であった.以上から,ICU看護師には頻回な手指衛生が求められるので手指消毒を推進することが重要であり,その一つとして携帯型手指消毒薬の適用は手指衛生の遵守率向上に有用であると考えられた.また,手指衛生の教育においてはICU看護師の背景やケアの特徴を踏まえた教育が必要であり,ICUにおける接触感染予防において患者周囲のME機器や備品に接触後の手指衛生は重要なポイントとなると考えられた.

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© 2009 一般社団法人 日本環境感染学会
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