日本環境感染学会誌
Online ISSN : 1883-2407
Print ISSN : 1882-532X
ISSN-L : 1882-532X
原著論文
数値流体力学的手法を用いた陰圧病室の飛沫核の解析
森本 正一堀 賢崎村 雄一伊藤 昭平松 啓一
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 24 巻 1 号 p. 9-14

詳細
抄録

  飛沫核感染の制御には,陰圧病室が不可欠である.しかし陰圧病室のデザインや気流が,室内気の飛沫核濃度に及ぼす影響についての動的な検討はほとんど行われていない.実在の陰圧病室をモデルとして,数値流体力学(CFD)的手法を用いて飛沫核の挙動と濃度を解析した.排菌患者が入室すると飛沫核濃度は直ちに上昇し,30分後に患者呼気の約1/1,200倍に希釈した濃度で定常状態となった.患者が退室した後では,飛沫核濃度は60分後に定常状態から約1/1,000倍まで減少した.陰圧病室のドアを閉め切ることで,室内気の前室への流出は認められなかったが,ドアを開放すると室内気が前室へ流れ込み,飛沫核濃度が急上昇した.また飛沫核の分布に与える吹出口と吸込口の影響について,同じ換気回数で検討した.飛沫核の分布は,患者の口と吹出口および吸込口との距離に影響されることが明らかとなった.CFD的手法を用いて飛沫核の挙動を検討することは,最適な陰圧病室を計画するのに役立つと期待される.

著者関連情報
© 2009 一般社団法人 日本環境感染学会
前の記事 次の記事
feedback
Top