2009 年 24 巻 5 号 p. 337-341
注射用カルバペネム系抗菌薬の届出制開始にあたり多剤耐性緑膿菌(MDRP)の発生率と緑膿菌の耐性率を調査し,カルバペネム系薬の使用密度(AUD)との関連性について検討した.2003年4月1日~2008年3月31日までの緑膿菌の検出率は4.7-5.7%と一定であった.MDRPの発生率は2006年度まで2%以下であったが2007年度では4.8%に増加した.その中でメタロβラクタマーゼ産生菌は新規3件程度/年と一定の割合にあったが,非メタロβラクタマーゼ産生菌は増加傾向にあった.調査期間中,耐性率はIPM/CS>MEPMで推移し,MDRPに対する環境感染対策を強化した2005年度をピークに耐性率はIPM/CS(27→23%),MEPM(19→15%)と共に減少した.一方,カルバペネム系薬のAUDは21.1-22.5と高い値で推移し,2007年度には26.6と増加した.2004年度以降その7割はIPM/CSとMPEMで占めていたが,前者は若干の増減を伴いながらも一定で後者は経年的に増加した.以上のことから,耐性緑膿菌対策として標準予防策の徹底や環境整備に加えて,カルバペネム系薬以外の抗菌薬における耐性化にも注意を要することが示唆された.