日本環境感染学会誌
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当院におけるVancomycin Therapeutic Drug Monitoring実施率改善に向けた取り組みと臨床評価
平野 龍一手代森 隆一立花 直樹
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2014 年 29 巻 2 号 p. 117-121

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抄録
  Vancomycin (VCM)の副作用に腎障害があり,発生頻度は血中濃度と相関するためTherapeutic Drug Monitoring (TDM)の実施が好ましい.当院における2010年度のTDM実施率は40%であり,2011年6月より実施率改善を目的に介入を行った.本研究は介入の効果,ならびにTDMの重要性を確認するため実施した.2010年4月から2011年3月までの30例を介入前,2012年4月から2013年1月までの35例を介入後とし,計65例を解析した.方法はVCMが投与された症例を抽出し,母集団薬物動態パラメーターから推計トラフ濃度を計算した.投与2日目に付箋を電子カルテの診療録に貼ることで推計トラフ濃度を報告し,TDMの実施を提案した.統計解析はχ2検定を行った.TDM実施率は介入前の40%(12/30)から介入後は80%(28/35)となり有意に改善した.腎障害発生率やVCM治療の有効率は介入前後で改善傾向にあるが有意な差は無かった.TDM実施群における有効率は70%(28/40),腎障害発生率は17.5%(7/40)であり,それぞれ有効率はTDM未実施群と比べ有意に高く,腎障害発生率は有意に低かった.電子カルテの付箋機能を用いた介入はTDM実施率改善に有効であり,VCMの適正使用に貢献したと考える.
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© 2014 一般社団法人 日本環境感染学会
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