日本環境感染学会誌
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原著論文
エチレンオキサイドガス滅菌した塩酸バンコマイシン注射剤へのガス混入
山崎 博史尾家 重治
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2014 年 29 巻 5 号 p. 340-344

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抄録
  人工関節固定などの手術時に感染症予防や治療のために塩酸バンコマイシン(VCM)を骨セメントに混合して使用する.手術室でのVCM入り骨セメントの調製は無菌の操作が要求されるため,手術室に持ちこむVCM注のバイアルはエチレンオキサイドガス(EOG)による滅菌を行っている.EOGは第一群発ガン物質として指定され,残留があると人体へ何らかの影響を及ぼすと考えられる.今回,EOG滅菌したVCM注バイアル内へのEOG混入の有無を調査した.さらに,安全に使用する際のガス抜き期間,および,EOGがVCMに接触することによる力価の低下についても検討した.
  EOG滅菌後エアレーションを17時間(n=3)および41時間(n=3)行った直後のVCM注のバイアル内には平均66.7 ppm, 8.3 ppmのEOGが混入していることが判明した.その後,室内放置でVCM注バイアル内に混入したEOGは減少し,各々14日後,1日後に消失した.また,EOG滅菌することによるVCMの力価(n=5)の低下は見られなかった.人工関節固定などの手術時にEOG滅菌したVCMを安全に使用するためには,EOG滅菌後エアレーションを17時間行ったのちガス抜き期間を室内放置で14日以上は設ける必要があると考えられた.また,早急に使用する場合には滅菌後エアレーションを41時間行ったのちガス抜き期間を室内放置で1日以上設けることが望ましい.
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© 2014 一般社団法人 日本環境感染学会
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