抄録
近年,我が国の医療財政は著しく逼迫しており,診療報酬の総体的な抑制は,医療機関経営の財務をも圧迫している.そのため,限られた医療資源の効率的配分の実現が強く求められており,診療報酬制度は効率性を勘案した評価へとパラダイムシフトが起こりつつある.同時に,医療機関内部においても,どの領域のどの活動にどの程度の資源を投じるか?を科学的に意思決定する動きが加速度的に増しているものと思われる.医療経済評価とは,こうした政策レベル・病院経営レベルにおける意思決定を科学的に判断するためのツールである.
本稿では,医療経済評価の基本的な考え方と,医療経済評価の実施手法について解説する.実施手法は広範囲に及ぶため,医療経済評価の核となる,(1)分析の立場,(2)比較対照,(3)分析手法,(4)分析期間,(5)アウトカム指標,(6)費用の測定,(7)割引,(8)不確実性の取り扱い,の中心事項について紹介する.