日本環境感染学会誌
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病院職員を対象としたパームスタンプ法を用いた手指衛生研修の有効性—単科精神科病院における実践—
山本 容子岩脇 陽子室田 昌子滝下 幸栄
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2015 年 30 巻 4 号 p. 281-287

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抄録

  本研究は,単科の精神科病院の職員を対象に実施したパームスタンプ法を用いた手指衛生研修の有効性を検証することである.
  病院職員42名を対象に,パームスタンプ法とグループワークを用いた手指衛生研修(2日間計3時間)を実施した.研修の前後に手指衛生に関する自記式質問紙調査を実施し16名(38.1%)の有効回答を得た.対象者の職種は,看護師81.3%,調理関係者12.5%,精神保健福祉士(PSW) 6.3%であった.手指衛生が「重要である」との認識は,研修後に有意に高くなった(p=0.02).WHO「手指衛生の5つのタイミング」では,「患者に接する前」,「患者周囲の環境に触れた後」の手指衛生の重要性が研修後に有意に高くなった(p=0.002).研修からの学びでは,87.5%が手洗い前の手指の汚染状況を知ることができたとしていた.
  2011年度の病院全体の1,000患者日数当たりの液体石けん使用量は6.3 L,手指消毒剤使用量は0.3 Lに対して,研修実施年度では,液体石けん17.9 L,手指消毒剤0.5 Lであった.
  本手指衛生研修では,単科の精神科病院の職員が手指衛生の重要性を再認識すると共に,病院全体の液体石けん及び手指消毒剤の使用量が増加したことから効果的であることが示唆された.

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© 2015 一般社団法人 日本環境感染学会
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