日本環境感染学会誌
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報告
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌サーベイランス方法における施設間差の検討
河村 一郎関谷 紀貴荒岡 秀樹冲中 敬二根井 貴仁原田 壮平松永 直久大曲 貴夫
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2015 年 30 巻 4 号 p. 268-273

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抄録

  国際的には耐性菌サーベイランスの指標を標準化する動きにあるが,我が国ではそのために必要な議論がまだ十分に行われていない.本研究では,耐性菌の代表であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)サーベイランスにおいて,国内施設の感染対策チームが実際にモニターする指標やその情報収集の方法に関する多様性を評価した.三次医療機関となる8施設に対して,全ての培養検体及び血液培養検体におけるMRSAサーベイランスの方法(分子・分母データの収集,測定する指標)に関するアンケート調査を実施した.院内伝播の指標である感染・保菌発生率または感染・保菌発生密度率は8施設中5施設,感染負荷の指標である血流感染発生率は1施設が測定していた.また,曝露負荷の指標である入院患者有病率や患者有病率全体を測定していた施設も存在した.同時に,これら指標を算出するために収集するデータの項目やその定義も異なっていた.このように我が国では,耐性菌サーベイランスにおいて測定する指標の選択や収集する情報の項目や定義が施設毎に異なるのが現状である.今後の標準化に向けて必要なことは,リスクアセスメントに有用で感染対策の介入につながる有効な指標に関する研究を進め,病院疫学者を交えて耐性菌サーベイランスの国家的なコンセンサスを模索することである.

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© 2015 一般社団法人 日本環境感染学会
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