日本環境感染学会誌
Online ISSN : 1883-2407
Print ISSN : 1882-532X
ISSN-L : 1882-532X
報告
整形外科病棟における2012/13シーズンインフルエンザアウトブレイクからの教訓と今後の課題
峯 麻紀子松原 祐一山本 稔栁原 克紀
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 30 巻 5 号 p. 341-347

詳細
抄録
  2013年1月末,55床の整形外科病棟で季節性インフルエンザのアウトブレイクを経験した.1月25日に50代女性の入院患者がインフルエンザ様症状を呈し,27日に別病室の入院患者3名が,翌28日には入院患者と病棟看護師各1名がインフルエンザAを発症したためアウトブレイクを宣言し,感染対策の強化を図った.しかし,1月31日には発症者が13名に達したため,病棟を閉鎖して入院患者と職員の計78名にオセルタミビルリン酸塩の予防投与を行い,第1症例発生から18日目に終息した.
  発症患者の11名中9名がリハビリ室を利用していた.また1名の理学療法士が担当した患者の発症が相対リスク3.43 (95%信頼区間1.05~8.44, p=0.025)と有意に高かったが,これは直接的な伝播要因としては断定できなかった.今回,感染源や感染経路の特定には至らなかったが,整形外科入院患者は日常生活動作が良好なため行動範囲が広いことや,リハビリ室での濃厚接触機会が多いこと等が感染拡大に関与していると考えられた.したがって,整形外科病棟の特性を考慮すると,インフルエンザ流行期の第1症例発生時には早期より患者への手指衛生や咳エチケットの徹底指導と,飛沫および接触予防策の実施が必要であるとの教訓を得た.感染拡大を最小限に食い止めるためには,予防投与以前にこれらの対策を迅速に行うことが今後の課題と考えられた.
著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本環境感染学会
前の記事 次の記事
feedback
Top