2016 年 31 巻 1 号 p. 41-47
感染防止対策加算の届け出医療機関においては,医療関係者に職業感染防止を目的としたワクチン接種が積極的に行われているが,その他の医療機関や介護福祉施設ではいまだ十分とはいえない状況と思われる.2012年から始まった風疹の流行を契機に161床のケアミックス病院の当院でもワクチン接種の気運が高まった.常勤職員の流行性ウイルス感染症の罹患歴・ワクチン接種歴を調査した.さらに,抗体価を測定し,ワクチン接種を勧奨した.罹患歴,抗体測定歴,2回のワクチン接種歴の記録の回収率は,対象者217名中14名(6.5%)と低率であった.EIA法による抗体価陽性率は,麻疹70.5%(153名),風疹78.3%(170名),ムンプス60.4%(131名),水痘100%(217名)であった.罹患歴やワクチン接種歴と抗体陽性率の関連性は低いことも確認された.ワクチン接種は一部自己負担で実施したが,接種率は低く課題が残った.適切に流行性ウイルス感染症対策を行うためには,罹患歴・ワクチン接種歴の有無にかかわらず抗体価測定を行い,その結果に基づいたワクチン接種勧奨が必要である.また,ワクチン接種にかかる費用は,医療施設負担とすることが望ましい.