抄録
MRSA分離率に影響する因子を検討するために2010, 2011年度2年間における新潟県内5施設のMRSA分離率と速乾式手指消毒剤使用量,手指洗浄剤使用量,抗菌薬使用密度,看護必要度,その他施設概要を調査した.MRSA分離率に対して単変量解析を行った結果,MRSA分離率は看護必要度で有意な相関(R=0.8982, p=0.04)を認め,セファロスポリン系AUD(R=0.7606, p=0.14)と抗菌薬届出制の有無(63.0% vs 83.6%, p=0.15)に有意な傾向を認めた.また重回帰分析の結果,看護必要度のみが有意な独立因子(R=0.8982, p=0.04)として選択された.処置・ケアの多さを表す看護必要度が高くなると手指衛生の手技の質や個人防護具の遵守率の低下につながり,結果としてMRSA分離率の増加につながると考えられる.一方でセファロスポリン系AUD,抗菌薬届出制の有無に有意な傾向を認めたことから抗菌薬の適正使用を推進する事も重要と考えられる.本研究から看護必要度はMRSA分離率に影響する因子となる可能性が示唆された.