2016 年 31 巻 5 号 p. 292-296
国内で麻疹が排除状態となった現在,曝露機会は少ないものの業務上麻疹ウイルスに曝露する可能性のある医療従事者や検査及び疫学調査に携わる者は,罹患を防ぐとともに自身が感染源とならないための予防と対策を徹底する必要がある.2015年度に当研究所に勤務し同意の得られた職員を対象に,ワクチン接種歴及び罹患歴に関するアンケートを実施し,ゼラチン粒子凝集法(PA法)で麻疹抗体価を測定した.アンケートは,全職員47名中,休業中の3名を除く44名全員に実施した.このうち42名(95.5%)に検査を実施し,36名(85.7%)が医療従事者としての基準を満たす抗体価陽性(256倍以上)であった.2回の予防接種記録がある4名のうち3名は基準を満たす抗体価陽性であったが,1名は陰性(16倍未満)でワクチン接種勧奨により後日麻疹風疹混合ワクチンを接種した.1回の予防接種記録がある17名中15名と予防接種記録のない21名中18名も基準を満たしていた.基準を満たさないものの,抗体価陽性であった5名中2名に麻疹含有ワクチンの1回接種記録,1名に罹患の記録があった.受検率は高く,職員の抗体価も概ね医療従事者の基準を満たしていたが,予防接種記録があっても陰性や基準を満たさない者がおり,今回のような調査や検査の実施は,有効なワクチン接種勧奨を可能にするとともに研究施設としての麻疹対策に有用と考えた.