日本環境感染学会誌
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報告
ビオチン添加末梢静脈栄養輸液におけるCandida albicansの増殖性に関する研究
大原 宏司松崎 哲也早坂 正孝
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2017 年 32 巻 1 号 p. 29-33

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抄録

Candida albicansC. albicans)は,カテーテル関連血流感染(CRBSI)の主な原因菌の一つであり,発症した場合の致死率は高い.既報では,末梢静脈栄養(PPN)輸液へのマルチビタミンの添加が本真菌の増殖を促すことが報告されている.昨今,わが国において9種の水溶性ビタミンを含有するPPN輸液(PP:パレプラス輸液)が発売された.中でもビオチンが真菌の増殖に関与すると報告されており,CRBSIのリスクが高くなることが懸念される.本研究では,PPN輸液中でのC. albicansの増殖能におけるビオチン添加の影響について検討した.市販のビーフリード輸液(BF)とPPを用い,さらにBFにビオチンを添加したもの(BF-Biotin(+)),BFにビオチン以外の水溶性ビタミンを添加したもの(BF-Biotin(-))を調製した.各試験液に一定量のC. albicansを添加し,室温で静置した.継時的に試料を採取し,コロニーを計測した.C. albicansは,BFとBF-Biotin(-)において増殖は緩やかであったが,PPとBF-Biotin(+)において急速な増殖が認められた.本研究結果より,C. albicansの増殖にはビオチンが関与することが明らかとなり,C. albicansの汚染があった場合には,従来のPPN輸液に比べ,ビオチン含有PPN輸液においてはCRBSIのリスクが高くなる可能性が示唆された.

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© 2017 一般社団法人 日本環境感染学会
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