日本環境感染学会誌
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報告
病棟改修工事に伴う感染対策の指標としての浮遊粉塵濃度の調査と対応
文字 雅義藤村 忍小林 建司宮﨑 崇
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2017 年 32 巻 2 号 p. 101-107

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抄録

建物の改修や解体時には,アスペルギルス属や他の真菌の胞子を含んだ浮遊粉塵が発生し,免疫力の低下している患者ではアスペルギルス属による院内感染が問題となることが知られている.

病棟改修工事期間中,主として浮遊粉塵濃度の測定結果に基づいて感染防止対策を行った.院内の浮遊粉塵濃度は大気中の浮遊粉塵(浮遊粒子状物質:SPM)の影響を受けたが,患者等病院利用者の滞在空間内では,工事によると考えられる明らかな浮遊粉塵濃度の上昇を認めなかった.工事現場への出入口の前で粉塵濃度の上昇を認めたのみであった.そのほか,(1,3)―β-D-グルカン検査数および陽性割合,アスペルギルス属の検出数についても,非工事期間と比べて有意な上昇が認められず,改修工事に起因したアスペルギルス症の患者は発生しなかった.大気中のSPM濃度を参照しながら院内浮遊粉塵測定することは感染対策上有用であると考えた.

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© 2017 一般社団法人 日本環境感染学会
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