日本環境感染学会誌
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拭取りアデノシン三リン酸測定法を用いた病院調理場の衛生状態実態調査
青山 高塚原 美香黒田 浩記倉井 華子
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2017 年 32 巻 4 号 p. 210-215

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抄録

【目的】拭取りアデノシン三リン酸(Adenosine triphosphate:ATP)測定法(以下,拭取りATP測定法)を用いて,静岡がんセンター栄養室(以下,当センター栄養室)の清掃後の衛生状態を明らかにすることが本研究の目的である.

【方法】2011年6月から2015年12月の期間,当センター栄養室調理場で,多数の調理従事者が触る7箇所(水道コック,冷蔵庫把手,オーブン把手,配膳車把手,配膳扉把手,調理台,移動式調理台)とベルトコンベアのベルトを合わせた8箇所を対象とし衛生状態の評価を行った.評価には拭取りATP測定を用いた.各箇所の発光量(Relative Light Unit:RLU)を調べ,厚生労働省食品衛生検査指針に基づき500 RLU値以上を汚染ありとした.経年的な評価を行うため,定めた箇所を複数回採取し,RLU値の相関を調べた.

【結果】8箇所のRLU中央値は361 RLU(1-16973)であった.各箇所において500 RLU以上を示した頻度は9回(5-17)であった.8箇所のうちベルトコンベアの汚染は1095 RLU(43-16973)と他の箇所より高く,汚染の頻度17/25(68%)も高かった.ベルトコンベアのベルトに経年で相関が認められた(r=-0.39;p=0.05)が,他の7箇所のRLU値に継時的変化は認められなかった.

【結論】当センター栄養室における拭取りATP測定法により,病院調理場の衛生状態を5年間継続して観察したところ,ベルトコンベアを除き,継時的なRLUの増加は認められなかった.5年間の拭取りATP測定法では,ベルトコンベアを除き経年で衛生状態は保たれていた.

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© 2017 一般社団法人 日本環境感染学会
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