日本環境感染学会誌
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バンコマイシン塩酸塩の初期投与設計に対する血中濃度の評価
鈴木 絢子田中 広紀並木 美加子池田 裕一向後 麻里佐々木 忠徳
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2017 年 32 巻 5 号 p. 250-257

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抄録

バンコマイシン塩酸塩(VCM)は薬物血中濃度モニタリング(TDM)が必要な抗菌薬である.今回,抗菌薬適正使用プログラム推進のため,体重とクレアチニンクリアランス(Ccr)からVCMの初期投与設計を行い,有用性を検討した.2013年6月~2015年7月に昭和大学藤が丘病院にて初期投与設計を行った実施群と非実施群に分けて後方視的に検討した.さらに2016年にガイドライン改訂版が発刊されたため,推定腎糸球体濾過率(eGFR)を算出しトラフ値を比較した.

211例の対象患者のうち初期投与設計実施群は120例(56.9%)であった.両群のトラフ到達度に差が認められ(p<0.001),10~15 μg/mLに到達したのは実施群42.5%,非実施群14.2%であった.用量変更を要した患者はそれぞれ30.8%,56.0%で実施群で有意に少なかった(p<0.001).ガイドライン改訂版に該当した43例のうちトラフ値が10~15 μg/mLに到達した患者は27.9%であった.eGFR 80 mL/分/1.73 m2以上の患者における負荷投与群と非負荷投与群の到達度に差が認められ(p=0.005),非負荷投与群における10 μg/mL未満の患者は63.5%であった.

体重とCcrによる初期投与設計は簡便であり,有用性が確認できた.また腎機能が良好な場合に特に初回負荷投与の重要性が示唆された.

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© 2017 一般社団法人 日本環境感染学会
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