日本環境感染学会誌
Online ISSN : 1883-2407
Print ISSN : 1882-532X
ISSN-L : 1882-532X
報告
複数の遺伝子型が関与した新生児特定集中治療室におけるMRSAアウトブレイク
増田 満伯日馬 由貴本間 功武後藤 博一小野寺 昭一
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 33 巻 5 号 p. 230-235

詳細
抄録

2016年3月より当院の新生児特定集中治療室(NICU)においてMethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)保菌児が急増したため,MRSAの水平伝播を疑い感染対策を行った.標準予防策の徹底,保菌児のコホーティングを行ったが保菌者は減少せず,スタッフのMRSA保菌調査および除菌,MRSA保菌児の除菌を行ったことでMRSA保菌者は制御された.対策期間中のMRSA感染症例はなかった.伝播経路の特定のためPCR-based ORF Typing(POT法)を利用した結果,8種類の異なる遺伝子型をもつMRSAが持ち込まれ,そのうち4種類がNICU内で伝搬していたことが判明した.POT法で判明した伝播経路と2次元キャリアマップ(2DCM-web)による伝播経路の推定が1例を除きその他全てが一致したことから,2DCM-webの有用性が示唆された.本事例では保菌者の増加に素早く対応することで感染者を出すことなく新規MRSA保菌患者の検出を終息させることができた.MRSAは外部から常に持ち込まれている可能性があることを念頭に,日頃からチームとして感染対策を行なっていくことが重要である.

著者関連情報
© 2018 一般社団法人 日本環境感染学会
前の記事 次の記事
feedback
Top