新生児及び小児病棟における,定期的な鼻腔の監視培養で検出されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)について,Polymerase chain reaction based open reading frame typing(POT)法を利用し水平伝播の推定が可能であった事例を報告する.【方法】大阪母子医療センターで2015年7月から2016年7月までに検出されたMRSAについて,POT法及び抗菌薬耐性パターンにより,水平伝播を推定した.【結果】入院患者由来MRSAの内,「院内新規」の81名について,同時期に同一病棟に入院歴のあった「水平伝播事例」は33名(POT型7種類)であった.新生児病棟では,MRSA検出患者42名中,水平伝播事例発生回数3回(22名),小児循環器科病棟ではMRSA検出患者42名中,水平伝播事例発生回数4回(11名)であった.POT型が同じ株間での抗菌薬耐性パターンは,水平伝播事例では全株一致した.2016年6月に実施された病棟職員の鼻腔培養で得られたMRSAは,患者由来のMRSAのPOT型と一致しなかった.【結論】POT法を利用することにより,同一病棟での同時期の複数の水平伝播を推定することができ,MRSAの病棟内水平伝播の把握に役立つと考えられた.