日本環境感染学会誌
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高齢者施設におけるAMR対策に関する研究―有料老人ホームと介護保険施設における「拡げない対策」の実態調査―
呉 禮媛網中 眞由美森 那美子西岡 みどり
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2021 年 36 巻 1 号 p. 10-27

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抄録

本研究では,有料老人ホームと介護保険施設における薬剤耐性Antimicrobial resistance(AMR)対策の実態を明らかにし,AMR対策のあり方を検討することを目的とした.無作為抽出した高齢者施設(有料老人ホーム,介護老人福祉施設,介護老人保健施設,介護療養型医療施設),計2,800施設の感染管理担当者を対象に自記式質問紙調査を行った.

254施設(9.1%)の回答を集計した.有料老人ホームは薬剤耐性菌が拡がりにくい条件が揃っていたが,他の施設類型と同様にMRSA,ESBL産生菌,CRE,MDRP,MDRA,VREによる集団感染が発生していた.高齢者施設のAMR対策は,マニュアル配備,研修,入所時対策などが不十分であった.入所時スクリーニングの実施率は22~33%であり,対象菌はほぼMRSAに限定されており,薬剤耐性菌を拡げやすいケア(尿道留置カテーテル管理,おむつケアなど)における対策にも課題があった.したがって,見落とされた保菌者の薬剤耐性菌を拡げやすいケアを介した拡大リスクが示された.

高齢者施設のAMR対策は,入所時スクリーニングを行わず,すべての入所者の薬剤耐性菌を拡げやすいケアの際に,標準予防策に加えて接触予防策を強化することが有効と考える.また,保健所や地域中核病院からの支援を推進するために診療・介護報酬によるインセンティブも必要と考える.

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© 2021 一般社団法人 日本環境感染学会
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