日本環境感染学会誌
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原著
訪問看護を利用する高齢在宅療養者の口腔内環境の実態およびその関連要因
野口 京子落合 亮太渡部 節子
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2021 年 36 巻 6 号 p. 321-328

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抄録

本研究は,訪問看護を利用する高齢在宅療養者の口腔内環境の実態を明らかにし,その関連要因を探索することを目的とした.訪問看護ステーション1施設の利用者を対象に,Oral Health Assessment Tool日本語版(OHAT-J)を用いて口腔内の直接観察を実施した.OHAT-Jは高齢者に向けた口腔内アセスメントツールであり,「口唇」「舌」「歯肉・粘膜」「唾液」「残存歯」「義歯」「口腔清掃」「歯痛」の8項目からなる.取り得る得点の範囲は0から16点で高得点程口腔内環境が悪い.対象者の口腔内環境の関連要因探索にはOHAT-J総合得点を最終内生変数としたパス解析を用いた.本調査では,高齢在宅療養者129人に調査協力を依頼し,67人が参加した(応諾率51.9%).OHAT-J総合得点の平均は4.2点(標準偏差2.6)で,各項目のうち対象者の過半数以上が「やや不良」,「病的」と評価された項目は「舌」,「口腔清掃」であった.パス解析で,OHAT-J総合得点への総合効果が最も高かった項目は,「要介護度3以上」(β=0.31)であった.本研究の対象者の口腔内環境は,先行研究における地域で歯科外来が利用できる高齢者より不良であった.要介護度が高い者,認知機能が低下している者,中でも家族が口腔ケアを実施している者には家族の困難感に着目した支援が必要であることが示唆された.

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© 2021 一般社団法人 日本環境感染学会
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