日本環境感染学会誌
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報告
COVID-19流行下における一般病棟での空気清浄機の使用経験
今井 悠遠藤 史郎堀内 幸子吉田 眞紀子賀来 満夫
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2024 年 39 巻 5 号 p. 209-213

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抄録

COVID-19の主な感染対策に換気がある.換気は自然換気と機械換気に分けられる.入院医療機関では機械式換気が主流であり,機械が十分に機能しているかの確認が必要となるが,築年数が古い建物の場合には,その確認も難しいことがある.近年,空気清浄機がSARS-CoV-2を空間から減少させることが実験的に示されており,空気清浄機の水平伝播予防効果が期待されている.オミクロン株出現以降,当院では複数のCOVID-19クラスターを経験した.COVID-19クラスターは新規入院停止や手術制限等を伴い,状況によっては医療機関に数千万円規模の経済的損失をもたらす可能性がある.施設に備え付けの換気システムを解決することが抜本的手段であるが,改修するには多くの費用と時間が必要であることから早急な対応は困難なことが多い.当院では換気システムが正常化するまでの姑息的な手段として,2022年9月,HEPAフィルタ付空気清浄機を1病棟の各病室に設置した.設置後,2023年1月末から2月に当該病棟でCOVID-19を数名認めたが,COVID-19が確認されなかった複数の部屋のHEPAフィルタからSARS-CoV-2を検出した.この事実は本空気清浄機が実臨床空間において空間のSARS-CoV-2減少に寄与した可能性を示唆する.本報告では実臨床空間におけるHEPAフィルタ付空気清浄機の使用経験に関して報告する.

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© 2024 一般社団法人 日本環境感染学会
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