2026 年 41 巻 2 号 p. 109-114
2024年9~10月,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)の検出が従来少なかった当院A病棟で6例を認め,感染制御チーム(ICT)が介入した.患者は平均年齢73歳で全員男性であり,検出部位はドレーン4例,膿汁1例,喀痰1例であった.発生時期は術後・処置後中央値12.5日であった.PCR-based ORF typing(POT)法による分子疫学解析では,同病棟で約半年間に検出されたMRSA12株中8株が型不一致で,明確な院内伝播は示されなかったが,残りの4株に2組の同一型が確認され,小規模な伝播の可能性も示唆された.環境調査では体重計と看護師用台車からMRSAが検出され,標準予防策や環境清掃の不徹底が関与したと考えられた.ICTは病棟カンファレンスで手指衛生と環境清掃の徹底を指導し,その後の新規発生は持ち込み1例のみで短期間で収束した.本事例は,市中由来を含む複数経路の持ち込みが主体で,一部に小規模伝播の可能性に対してICTが早期に介入し,環境調査を併用した標準予防策徹底により有効に制御し得ることを明らかにした.