環境感染
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ウェスタンブロッティング, パルスフィールドゲル電気泳動, およびPolymerase chain reactionを用いたタイピングにより検討したClostridium difficile性腸炎の再発例
加藤 はる加藤 直樹渡辺 邦友上野 一恵坂田 葉子藤田 晃三
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1995 年 10 巻 2 号 p. 12-17

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抄録
3回の再発が認められた11歳のClostridium difficile性腸炎例の計4回のエピソードにおけるC.difficile分離株について, ウェスタンプロッティング (WB), パルスフィールドゲル電気泳動 (PFGE), およびpolymerase chain reaction (PCR) によるタイピングを用いて検討した.エピソード2の際の分離株はどの3つのタイピング法を用いてもエピソード1の際の分離株と同じタイプであり, エピソード2はエピソード1と同じ株による再燃と考えられた.しかし, エピソード3の際の分離株は3つのタイピング法でエピソード1および2の分離株と異なるタイプを示したことから, 新しい菌株による再感染であると考えられた.エピソード4の際に分離された菌株はWBタイピングではエピソード1と2の際に分離された菌株と異なり, さらにエピソード3からの分離株とも異なるタイプであった.しかし, エピソード4からの菌株はPFGEタイピングでは細菌のDNAが抽出過程で破壊されタイピングができず, PCRタイピングではエピソード1および2からの分離株とはminor bandに違いが認められたのみで, エピソード1と2の分離株と同じタイプに分類された.これらのことからエピソード4はさらに新しい菌株による感染と考えられた.Cd顔ae起因性腸炎では治療にいったん反応しても, 再発が多いことが治療上大きな問題となっている.タイピング法は, このような再発が同じ菌株による再燃なのか, 新しい菌株による再感染なのかの検討を可能にし, C.difficile感染の治療や予防を行ううえで非常に有用であると考えられた.
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© 日本環境感染学会
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