環境感染
Online ISSN : 1884-2429
Print ISSN : 0918-3337
ISSN-L : 0918-3337
胃手術の創感染サーベイランス
藤本 卓司芝 イク子
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 14 巻 3 号 p. 196-199

詳細
抄録
市立堺病院では1997年10月から胃手術の創感染サーベイランスを開始した.その結果および市中病院のおいて創感染サーベイランスを実施する意義について検討したので報告する.
対象は創感染サーベイランス開始前の1996年10月から1997年3月まで, サーベイランス開始後の1997年10月から1998年3月までに当院で実施した胃手術のすべてである.外科医師, 病棟看護婦を対象に, 創感染とその予防の具体策, サーベイランスの意義, 方法などの学習会を実施した後, サーベイランスを開始した.
創感染率はサーベイランス開始前後で30.8%から9.7%へ減少した.症例の大半を占めるNNIS危険指数1の群では27.3%から8.0%へ減少したが, CDC基準値5.6%に比べると高値であった.創感染に係わる因子の中では手術時間, 予防的抗生物質の投与開始のタイミング, 投与日数に有意な変化が認められた.手術時間は5時間59±112分から4時間25±88分へと短縮した.抗生物質を出棟時あるいは執刀時, すなわち手術直前に開始した症例は12%から61%へ増加し, 投与日数は5.3±2.7日から3.7±1.5日に短縮した.
創感染サーベイランスは日本においてまだ広く行われていないが, これを実施することにより各医療施設での危険因子が明らかになり, 創感染の減少に寄与しうると考える.
著者関連情報
© 日本環境感染学会
前の記事 次の記事
feedback
Top