環境感染
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心臓大血管手術症例におけるムピロシンの役割
久田 友治健山 正男齋藤 厚国吉 幸男古謝 景春
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2003 年 18 巻 2 号 p. 232-234

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抄録

手術患者の鼻腔におけるブドウ球菌の定着は術後感染症の危険因子であり, 心臓大血管手術は手術部位感染の推定病原菌がブドウ球菌である手術の中では, 術後感染のリスクが高い.今回, 心臓大血管手術症例におけるMRSA感染予防対策としてのムピロシンの役割を明らかにするため, 介入試験を行った.1997年5月から98年4月までを介入時期とし, その間の全予定手術症例306例のうち心臓大血管の手術症例140例を試験群とした.試験群は術前に鼻腔の細菌検査を行い, MRSAが陽性の9症例にムピロシンの鼻腔内塗布を施行して手術に臨んだ.96年5月から97年4月までの全予定手術症例338例のうち心臓大血管の手術症例141例を対照群とし, 後ろ向き調査を行った.両群の背景因子すなわち, 性, 年齢, 手術時間, 手術対象臓器, 米国麻酔学会のphysical statusに差はなかった.試験群の術後MRSA感染は3例 (2.1%) であり, 対照群の23例 (16.3%) に比し有意に減少した (p=0.0001).感染部位別に見ても手術部位感染 (p=0.01), 肺炎 (p=0.01) が有意に減少した.この結果は心臓大血管の予定手術症例に対するMRSA感染対策としての術前の鼻腔細菌検査とムピロシン鼻腔内塗布の有用性を示唆している.

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© 日本環境感染学会
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