環境感染
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高齢者における塩酸バンコマイシンの有効血清中濃度域に関する検討
胡本 千穂喜多 知子栄田 敏之奥村 勝彦李 宗子高橋 京子木下 承皓近藤 信一西庄 京子横山 直樹尹 聖哲西村 善博荒川 創一
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2003 年 18 巻 2 号 p. 227-231

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抄録

塩酸バンコマイシン (VCM) の薬物血中濃度測定に基づく治療管理 (TDM) において, 高齢患者に添付文書通りの用法用量を遵守し投薬しても, 血清中濃度が推奨濃度域に到達せず, 投与スケジュールの変更を余儀なくされる例をしばしば経験してきた. そこで本研究では, VCMの投与法, 血清中濃度, 有効性, 副作用発現 (血清クレアチニン値上昇) の相互関係について, レトロスペクティブにデータ解析を行い, VCMの有効濃度域に関する情報の集積を目指した.
当院にて, 1g分1又は1g分2投与のVCM治療を受けたMRSA感染症高齢患者のうち, VCMの血清中濃度値 (点滴終了1~2時間後値 (ピーク値) および投与直前値 (トラフ値)) もしくは有効性が確認された, のべ21名を対象とした. 1g分2投与群の場合, ピーク値およびトラフ値が共に推奨濃度域に到達している患者はなく, ピーク値のみに限定した場合でも, 推奨濃度域に到達している患者の割合は33%と低かった. 一方, 1g分1投与群では, ほとんどの患者においてピーク値が推奨濃度域に到達していた. なお, 有効例におけるピーク値は, 必ずしも推奨濃度域に到達していなかった. さらに, 文献調査を行ったものの, 添付文書に記載された推奨濃度域の設定根拠は十分でなかったことから, 今後, 科学的根拠に基づいた添付文書の改訂もしくは情報提供が急務であると思われた.

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© 日本環境感染学会
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