環境感染
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ICU施設属性とICU内院内感染の関係
須賀 万智吉田 勝美武澤 純荒川 宣親
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2004 年 19 巻 3 号 p. 395-400

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抄録

目的: 術後患者の割合によるICU施設属性の違いをしらべ, ICU施設属性とICU内院内感染の関係を明らかにする.
方法: 2000年7月~2002年5月, 厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業参加34施設から収集されたICU収容患者データから, 年間100件以上を登録した23施設について, 年齢16歳以上, ICU在室24時間以上1000時間未満, ICU退室時転帰とAPACHEスコアの情報が得られ, 他院ICU転出例を除いた12332件を対象にした.術後患者の割合により, 49%以下 (3ICU, 1983件), 50~79% (11ICU, 6438件), 80%以上 (9ICU, 3911件) の3群にわけ, 性年齢階級別分布, APACHEスコアの分布, ディバイスの分布, およびICU在室期間中の標準化死亡比と生存者のICU在室日数の平均を比較した. ICU内院内感染について, 比例ハザードモデルによる多変量解析から, 術後患者の割合別3群のハザード比をもとめた.
結果: x2検定から, 年齢, APACHEスコア, 人工呼吸器, 中心静脈カテーテル, 尿路カテーテルに関して, 術後患者の割合別3群間の有意差を認めた. ICU在室期間中の標準化死亡比は (95%信頼区間) は, 50~79%群を基準にして, 49%以下群が1.3 (1.1~1.5), 80%以上群が0.8 (0.7~0.9) であり, 術後患者が多いほど低かった. APACHEスコアと術後患者の割合別3群による2元配置分散分析から, 生存者のICU在室日数の調整平均 (95%信頼区間) は49%以下群が6.4 (6.1~6.6), 50~79%群が5.3 (5.1~5.4), 80%以上群が4.7 (4.6~4.9) であり, 術後患者が多いほど短かった. ICU内院内感染について, 性, 年齢, APACHEスコア, 手術, ディバイスを考慮したハザード比 (95%信頼区間) は, 50~79%群を基準にして, 49%以下群が0.80 (0.68~0.96), 80%以上群が1.38 (1.21~1.58) であり, 有意な関連を認めた.
結論: 術後患者の割合によるICU施設属性とICU内院内感染の関連を認めた. ICUサーベイランスデータを評価するにあたり, ICU施設属性を考慮する必要があると考えられた.

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© 日本環境感染学会
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