抄録
内科入院患者を対象にrisk factor surveillanceを行い, MRSAを検出する危険性の高い患者の推定を試みた.2002年10月から2006年1月までの40ヵ月間に当院内科病棟からハイリスク報告された1005例を対象とした. ハイリスク報告患者1005症例中153症例 (15.2%) からMRSAを検出した. 年齢が59才以下では検出率は8.6%であったが, 80才以上では21.6%と高値を示した. リスク別のMRSA検出率は0-37.5%であった. 該当患者数が100名以上のリスクではIVH挿入, 抗菌薬使用, 尿道カテーテル留置の各リスクを有する患者でMRSA検出率が高値であった. MRSA検出症例153症例中107症例 (69.9%) が抗菌薬の投与を受けており, ペネム系, ペニシリン系抗菌薬の投与を受けた患者で検出率が高値であった. MRSA検出患者の平均リスク数は2.46, MRSA非検出患者の平均リスク数は1.54で複数のリスクを持つ患者ではMRSA検出率が高値であった. 以上の結果より80才以上の高齢者, IVH挿入患者, 尿道カテーテル留置患者, 抗菌薬投与患者, および複数のリスクを併せ持つ患者ではMRSA検出危険度が高く, これらの患者についてICTはより厳重に監視していく必要がある.