環境感染
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訪問入浴における褥瘡患者のMRSA伝播予防策の検討
小椋 正道矢野 久子村端 真由美岡田 忍和田 順子寺島 宏岡本 典子脇本 幸夫下鶴 紀之古川 浩奥住 捷子溝上 雅史鈴木 幹三
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2007 年 22 巻 2 号 p. 91-97

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抄録

超高齢化社会に伴い, 訪問入浴サービスの利用者は増加していくと予測される. 訪問入浴サービスは入浴器具を利用者毎に洗浄して使用するため, 入浴器具や入浴サービス提供者の手が微生物汚染していると交差汚染する可能性があると推測できる. そこで, 訪問入浴におけるエビデンスに基づいた感染予防策を検討するために, 褥瘡があり臥床状態の10名の入浴サービスに使用した入浴器具と入浴サービス提供者の手のMRSA汚染の実態を調査した. その結果, 入浴介助前, 洗浄後の入浴器具からMRSAがそれぞれ4.3% (4/92), 5.2% (6/115) 検出され, 入浴介助前および手洗い後の入浴サービス提供者の手 (手掌および上腕部) から1.2% (2/168), 4.0% (2/50) 検出された. 検出されたMRSAのPulsed-field gel electrophoresis (PFGE) 解析では, 入浴介助前の入浴サービス提供者の手掌に付着していたMRSAと入浴介助後の担架ネットから検出されたMRSAのフィンガープリソティングタイプが一致しており, 訪問入浴を介した微生物伝播が示唆された. 不十分な洗浄や手洗いにより入浴器具や入浴サービス提供者の手掌等が汚染していた場合, 褥瘡のある利用者では訪問入浴サービスを介してMRSAに代表される微生物が利用者間で伝播する可能性があると推察された.速乾性手指消毒薬の導入や入浴器具の洗浄方法など, 適切な予防策の整備や研修の実施が必要であると考えられた.

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© 日本環境感染学会
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