予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
学校と医療の連携 ~宮城県仙南地区における取り組み~
大塚 達以木戸口 千尋佐藤 純子鈴木 春香齋藤 和子
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2016 年 1 巻 1 号 p. 80-91

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抄録

子どもの心の問題への対応には、学校と医療の連携が不可欠である。児童精神科臨床においては、子ども達の心の問題の背景に様々な環境要因が関与するため診察室内だけで完結せず、学校情報や学校介入を要することが多い。一方、学校現場では教育の範囲で様々な取り組みが行われているが、医療的視点からの対応を要し学校内対応では不十分な場合も多い。しかし、効率的で有効な学校と医療の連携の形は未だ確立してはおらず、相互理解の乏しさや、精神疾患への偏見も存在し、スムーズな連携が行われているとは言い難い。そのような中、学校現場におけるメンタルヘルスの普及啓発や精神疾患の早期発見・早期介入を目的として、平成22年より宮城県仙南地区にて、3つの高校と1つの中学校を対象に、県主導のモデル事業が展開された。本事業の主な内容は、①学校内で行われる支援委員会、②教師・生徒向けの研修会、③心の健康調査、④合同事例検討会、⑤専門外来の開設であり、医療スタッフが学校現場に積極的に介入した。学校と医療の連携のコアとなったのは、モデル校で開催された支援委員会での事例検討会であり、検討会を通して学校と医療の相互理解が深まり、学校現場でのメンタルヘルスに対する理解や生徒への対応力が向上したと考えられた。学校と医療の連携のためには、顔の見える関係の構築とその継続を可能とする連携システムが必要である。

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© 2016 日本精神保健・予防学会
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