抄録
【目的】精神疾患をもつ人の早期支援において、微弱な精神病体験は、精神病発症のみならず後の精神的不調との関連が指摘されることから、正確に評価される必要がある。しかし、一般の医療現場や教育現場におけるスクリーニングテストのような簡易な評価の意義は十分に検討されておらず、実施に至っていない。本調査では、東京大学医学部附属病院精神神経科「こころのリスク外来」メール相談において実施された、前駆状態の可能性がある精神症状の簡易評価「PRIME-Screen日本語版」の回答結果を検討し、早期支援においてスクリーニングテストを活用する意義について検討を行った。
【方法】2014年5月~2016年9月にメール相談があり、PRIME-Screen日本語版への回答が得られた相談者を対象とした。スクリーニング陽性群・陰性群の年齢・性別・受診歴有無を示し、スクリーニングと診断結果を示した。
【結果・結論】対象者39名(平均年齢18.6歳、男性16名・女性23名)の内、スクリーニング陽性群は13名(33%)、陰性群は26名(67%)であった。スクリーニング陽性群のうち10名がこころのリスク外来を受診、うち3名が初回エピソード精神病状態または精神病状態へのリスク状態と診断された。陰性群のなかで、こころのリスク外来を受診した4名のうち1名、また当院一般外来を受診した5名のうち2名が初回エピソード精神病状態または精神病状態へのリスク状態(一般外来では統合失調症疑い)に該当した。相談内容について、スクリーニング陽性群では、主訴に何らかの「陽性症状」が含まれることが有意に多かった。PRIME-Screen日本語版は、精神病発症のリスク状態・精神的不調の程度を評価するツールとして限界を踏まえたうえで今後活用できる可能性がある。