抄録
疾患修飾とは、疾患の病態生理に作用して経過を改善する治療や介入と定義されるが、統合失調症において疾患修飾ということを考えられるであろうか。統合失調症の病因や病態生理は解明されていないとはいえ、統合失調症にはいくつかの有力な生物学的病態仮説があり、それらの仮説は相互に関連しているので、確実性の高いメカニズムに働きかけ、想定される病態プロセスの進行を少しずつでも阻止する手段を講じることによって、統合失調症における疾患修飾がある程度可能となるかもしれない。本総説では、統合失調症の主要な病態生理仮説を概観し、そこから想定される病態進行プロセスについて述べ、それを阻止して疾患修飾に近づくための、精神症ハイリスクを対象としたアプローチの可能性と検討すべき課題について考察する。